「愛を伝えたいだとか」オフィシャルインタビューアップ!
「いい意味で、期待を裏切りたかった」
変化の季節を克明に刻んだメジャー2ndシングル『愛を伝えたいだとか』

 
昨年11月にシングル『生きていたんだよな』でメジャーデビューを果たした兵庫県西宮市出身、現在22歳のシンガーソングライター、あいみょん。“生きていたんだよな”がテレビドラマ『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』のオープニングテーマに起用されたのに続いて、今年2月に公開された話題の映画『恋愛奇譚集』の主題歌“漂白”を書き下ろし、順調なキャリアのスタートを切ったが、新曲の制作にあたっては葛藤もあったという。
 
「“生きていたんだよな”のイメージが着いてしまうのが怖かったんです。〈このジャンルしか歌えへん〉とかなってくると、シンガーソングライターとして活動していく上で、絶対しんどくなると思うし、もともと〈生きる〉とか〈死ぬ〉とか、命にまつわる曲を多く書いてきたので、〈またこういう曲か〉と思われるのも嫌で。むしろ、私の強みは〈どんなジャンルでも書ける〉ってことだと思うので、〈この子はこういうのもできるんや〉って思ってほしかったんですよね。何枚かリリースした後に、違った感じの曲を出すと、〈路線変更した〉って思われるかもしれないけど、まだ2枚目だからこそ、チャレンジできると思ったし、いい意味で期待を裏切りたいと思ったんです」
 
こうした想いを持って制作されたメジャー2ndシングル“愛を伝えたいだとか”は、ミニマルなビートに乗った村田シゲ(□□□/ORIGINAL LOVE/YEN TOWN BANDなど)のファンクネス溢れるベースラインと、クラビネットのフレーズが耳に残るグル―ヴィーな曲調に。“生きていたんだよな”の真っ直ぐな歌声とは異なり、微熱感を帯びたやや大人びたヴォーカルが、シンガーとしての新たな一面を垣間見せてもいる。
 
「弾き語りで作った曲に、プロデューサーの田中ユウスケさんがキーボード片手に〈こういう音が合うんじゃない?〉って、互いに「面白い!」といえる様なポイントが見つかるまで、音やフレーズを重ねたり引いたりして作って行きました。私、ずっとフリッパーズ・ギターが好きだったんですよ。オザケンみたいになりたかったんですけど、〈私には無理だ〉って、あきらめた十代だったんです(笑)。でも、洋楽だとマイケル・ジャクソンを聴いてたり、その後に歌謡曲に出会って、探り探りしながら、今のこの感じに辿り着いたんです」
 
なるほど、言われてみれば、“愛を伝えたいだとか”のクラビネットは、どこか小沢健二の名曲“ラブリー”にも通じるものがある。フリッパーズへの愛情は田中にも伝えていたそうで、彼がそっとオマージュを忍ばせたのかもしれない。一方、“ラブリー”のように愛を伝えたいのに、大好きな人に会えない切なさを男目線で綴った歌詞は、まさにあいみょん節。〈愛を伝えたいだとか 臭いことばっか考えて待ってても だんだんソファに沈んでいくだけ〉〈僕が明日良い男になるわけでもないからさ 焦らずにいるよ 今日は日が落ちる頃に会えるの?〉など、男の情けなさと愛らしさを描かせたら、彼女に並ぶ若手シンガーソングライターはそうそういないはずだ。
 
「男の人の書くラブソングって、その人に対しての最終手段なのかなって思うんです。女の人はいつだって感情を表に出すけど、男の人は〈嫌われたくない〉って思ったり、周りの目を気にしたりして、上手く感情を出せないから、曲にするのは最終手段で、その想いが尋常じゃないんですよ。平井堅さん、槇原敬之さん、浜田省吾さんとか、男の人の書くラブソングには絶対かなわへんと思って、だからこそ、そういう曲に惹かれるんだと思う」
 
では、なぜあいみょんが性差を超えて繊細な感情の動きを描けるのかといえば、それは彼女の人間に対する愛情が人一倍強いからだろう。彼女は大家族に生まれ育ち、それゆえ常に家族の重要性を語っているが、大切な人との別れを描いた“ハッピー”や、15歳のときに友人のカップルを見て書いたという“MIO”からは、よりストレートに想いの深さが伝わってくる。そして、その愛情は徐々に身近な人から聴き手へと広がり、それと共に、あいみょんの音楽家としての自我が少しずつ芽生えつつある。
 
「私ちょっと前まで人前で歌うことに楽しさをあまり感じてなかったんです。〈自分は音楽に向いてへん人間や〉ってずっと思ってて、お客さんの顔も全然見れなくて。でも、メジャーデビューしてからのツアーは、私メインで見に来てくれる若い女の子のファンが増えたのもあって、〈もっとこう見せれたら、みんなが喜んでくれるのに〉って考えられるようになったんですね。ツアーファイナルでミスをしちゃったときは、初めて悔し涙が出たんですけど、そういう経験をしないまま進んでたら、私どっかで音楽を捨ててたかもしれないと思う。でも、今は音楽に対する愛着がだいぶ湧いてきてるんやなって思いました」
 
メジャーデビューから半年足らずで、重要な時期を迎えつつあるあいみょん。『愛を伝えたいだとか』は、そんな変化の季節を克明に刻んだ一枚だと言えよう。
 

インタビュー&テキスト/金子厚武
 
 
Posted : 2017.05.01
1  | 2  | 3  | 4  | 5  | 6  | 7  | 8  | 9  | 10  | 11  | 12  | 13  | 14  | 15  | 16  | 17  | 18  | 19  | 20  | 21  | 22  | 23  | 24  | 25  | 26  | 27  | 28  | 29  | 30  | 31  >